蓮實重彦『伯爵夫人』、10年ぶりの続篇『二朗物語』が11月26日(木)刊行 舞台はGHQ占領下の東京へ

三島由紀夫賞を受賞した蓮實重彦さんの小説『伯爵夫人』に、10年ぶりとなる続篇が登場します。タイトルは『二朗物語』。株式会社新潮社から2026年11月26日(木)に刊行されます。元東京大学総長で、文学と映画の批評でカリスマ的な存在として知られる作者が、今年90歳を迎えて完成させた長篇小説です。

『伯爵夫人』から続く、戦中・戦後篇
新潮社は、前作『伯爵夫人』を近年最大の「文学的事件」だったとしています。日米戦争前夜を舞台に、〈伯爵夫人〉と呼ばれる謎めいた女性と旧制高校生が数時間にわたって性的な交渉を重ねる姿を、声に出して読めないほど露骨な性描写と卑語をあふれさせながら、香り高い文章で描いた作品です。
物語は一九四一年十二月八日の夕暮れに始まります。高校生の二朗は、自宅に同居する伯爵夫人と日比谷で偶然出会い、数刻にわたって性的な洗礼を受けます。断髪の従妹・蓬子との未熟な戯れしか知らなかった二朗は性の深淵をのぞき込みますが、何度も射精しながらも、童貞のままに終わります。やがて伯爵夫人は姿を消し、蓬子も婚約者のもとへ去っていきました。それから数年後、東京帝国大学に進んだ二朗は学徒出陣で陸軍に応召します。『二朗物語』は、ここから一九四五年春の物語として幕を開けます。
三島由紀夫賞の受賞会見も大きな話題になりました。受賞の心境を尋ねた司会者に「わたくしは『心境』などというものはないと思っております」「まったく喜んではおりません。はた迷惑な話だと思っております」と返し、記者の質問にも「馬鹿な質問はやめていただけますか」とたしなめるなど、“不機嫌会見”として注目を集めました。この会見は今もYouTubeで視聴できます。
活劇とエロスが交差する全3章
新作のキーワードは「活劇×エロス×占領下東京」。二朗はかつて伯爵夫人にも奪われなかった童貞を喪い、大日本帝国は戦争に敗れます。それでもGHQ占領下の東京で、二朗の性の冒険は依然として苛烈に、そしていよいよ奔放に続いていきます。謎めいた〈男装〉の女スパイ、放埓な女中たち、そして性の古強者だった祖父がひそかに遺したフランス製の拳銃。無尽蔵な官能とアクションが、芳醇無類の日本語とともに描かれます。
各章のあらすじ
- 第1章「午後の朝鮮薊」:前作で学習院高生だった二朗は帝大に入学したものの召集され、陸軍士官となっています。昭和20年春、日本の敗色が濃厚になるなか、広島からジャワへ飛び、接収した米国製映画を分析せよという命令が下ります。
- 第2章「アニー・パイルと「イサイ フミ」」:空襲の標的にされた広島に入れなかった二朗は、駅で出迎えた黒衣の女と尾道の宿に入り、悦楽の阿鼻叫喚のなかで童貞を喪います。女は米国のスパイらしく、戦後、進駐軍相手の劇場で二人は再会します。
- 第3章「ポンテコルヴォ、または「純白の夜」いかがわしくも色づきて」:大学に戻った二朗が自宅で病に臥せっていると、従姉が訪ねてきて、祖父が隠していたフランス製の拳銃を進駐軍の手前、始末しなければならないと言い出します。病み上がりの二朗は、再び性的な活劇を繰り広げることになります。
90歳を迎えた批評家、10年ぶりの小説
蓮實重彦(はすみ・しげひこ)さんは1936年、東京生まれ。今夏には主著『「ボヴァリー夫人」論』の加筆文庫化と、『大江健三郎論』の増補改訂版が刊行されました。映画の分野では黒沢清さんの世代にとどまらず、濱口竜介さんや三宅唱さんの世代にも影響を与え続けています。映画関連のトークイベントは毎回満員札止めになり、客層も若返っているといいます。11月に東京大学大江健三郎文庫で予定されている講演も、すぐに予約で埋まりました。近著には『日本映画のために』(岩波書店)などがあります。
『二朗物語』は、作者にとって10年ぶりの小説です。書籍の詳細は以下のとおりです。
- タイトル:二朗物語
- 著者:蓮實重彦
- 発売日:2026年11月26日(木)
- 造本:四六判
- 本体定価:2,420円(税込)
- ISBN:978-4-10-304354-6
出典:株式会社新潮社


