滝口悠生の最新連作集『歯ごたえと喉ごし』が新潮社から発売 川端賞受賞作「反対方向行き」から始まる、鉄道とうどんでつながる6篇

人生のささいな偶然と奇跡を描いてきた作家・滝口悠生氏の最新作『歯ごたえと喉ごし』が、株式会社新潮社から発売されます。川端康成文学賞を受賞した短篇「反対方向行き」を起点に、登場人物たちの人生が次々と連なっていく連作小説集です。
はじまりは、鉄道小説アンソロジーに寄せた一篇
この連作集が生まれるきっかけになったのは、鉄道開業150年を記念して企画された鉄道小説アンソロジーのために書かれた短篇「反対方向行き」です。舞台は、一見すると旅情の薄い湘南新宿ライン。目的地とは逆向きの列車に乗ってしまった女性が、車中で自らの人生を振り返る物語です。
この作品は、その年で最も優れた短篇小説に贈られる川端康成文学賞(2022年、第47回)を受賞しました。選考委員の荒川洋治氏は「鉄道の風景を通して、人生の軌道をたどる、新しさのある、楽しい短篇」と評し、角田光代氏は「思わぬところに連れていかれ、下車したら思いもしなかった光景が広がっていた、そう思わせてくれるラストだった」と言葉を寄せています。
「反対方向行き」の精神はその後の連作にも受け継がれ、各篇の登場人物たちは一筋縄ではいかない関係で結ばれていきます。新潮社は本作を、柔らかくも食べ応えのある、作中で叔父が作るうどんのような物語であり、読めば旅に出たくなり、うどんを食べて温泉に浸かりたくなる「体験型連作小説」と紹介しています。キャッチコピーは「人生は、他の誰かのスピンオフ。」です。
人から人へとつながっていく物語
宇都宮行きのはずが、小田原行きに
表題作に至るまでの流れは、こんなふうに進みます。「なつめ」は湘南新宿ラインで宇都宮へ向かうつもりが、気づけば乗っていたのは反対方向の小田原行き。車内で思い出すのは、かつて宇都宮から呼び寄せた、今は亡き祖父「竹春」と過ごしたつかの間の日々でした(「反対方向行き」)。
宇都宮、奥会津、そして台南へ
時が流れ、なつめの出張中に宇都宮の知人のもとへ預けられることになった一人娘の「梅」。かつて竹春が暮らしていた家で不安を募らせる彼女の目に映ったものとは(「テレパシーの手」)。さらに、梅の父親でなつめとは離婚している「美津夫」は、フリーライターの仕事をきっかけに運営を任された奥会津の温泉宿で湯に浸かっていると……(「湯あたり」)。
一方、なつめの叔父で居場所がなかなかつかめない「原郎」が台南でうどん屋を開いていると聞きつけたなつめたち一行は、現地を訪ねることに(「歯ごたえと喉ごし」)。レールとうどんでつながる人々の人生を描いた全6篇が収められています。
著者・書籍情報
滝口悠生(たきぐち・ゆうしょう)氏は1982年、東京都八丈島生まれ、埼玉県育ち。2011年に「楽器」で第四十三回新潮新人賞を受賞してデビューしました。2015年に『愛と人生』で第三十七回野間文芸新人賞、2016年に「死んでいない者」で第百五十四回芥川龍之介賞、2022年に『水平線』で第39回織田作之助賞を受賞し、翌年には同作で第73回芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。ほかの著作に『寝相』『ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス』『茄子の輝き』『高架線』『やがて忘れる過程の途中(アイオワ日記)』『長い一日』『ラーメンカレー』『たのしい保育園』『往復書簡 ひとりになること 花をおくるよ』(植本一子氏との共著)などがあります。
- 書名:『歯ごたえと喉ごし』
- 著者:滝口悠生
- 体裁:四六版クレスト装カバー、240頁
- 価格:2200円(税込)
- ISBN:978-4-10-335315-7
- 発行:株式会社新潮社
出典:株式会社新潮社


