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戦争が壊した一人の女性と家族の物語 トンミ・キンヌネン『樹皮の下で』が新潮クレスト・ブックスから刊行

戦争が壊した一人の女性と家族の物語 トンミ・キンヌネン『樹皮の下で』が新潮クレスト・ブックスから刊行

フィンランドで最も影響力のある作家の一人、トンミ・キンヌネン氏の長篇小説『樹皮の下で』が、10月28日(水)に株式会社新潮社の新潮クレスト・ブックスから刊行されました。キンヌネン氏はデビュー作『四人の交差点』が本国で大ベストセラーとなり、高い評価を受けた作家です。新作では、戦争によって心に深い傷を負ったまま生きた一人の女性の生涯を描いています。

(c)Ofer_Amir
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「継続戦争」の地を舞台に、沈黙と家族の崩壊を描く

物語の舞台は、フィンランド北東部のロシア国境に近い町です。この一帯は、かつてフィンランドとソ連のあいだで戦われた「継続戦争」(第二次ソ連―フィンランド戦争)の舞台となりました。本作は、その地で戦争の深い傷を抱えて生きた女性と、その傷のために壊れてしまった家族の姿を描いています。

人生の最期まで消えることなく、本人だけでなく家族までも破壊してしまう戦争の被害とは、いったい何なのか。作品は巧みな構成と緊張感のある筆致で、歴史から抹消された戦争被害に光を当てています。

あらすじでは、町で死を迎えようとしている一人の女性が描かれます。彼女は戦争で心に深い傷を負い、亡き夫や子供たちにも心を閉ざしたまま、誰にも言えない秘密を抱えて生きてきました。戦争によって何を奪われたのか、沈黙によって何を守ろうとしたのか。人生の最期の瞬間まで続く戦争の傷を見つめる長編小説です。

中島京子氏、新聞2紙、フィンランド図書財団が寄せた推薦の言葉

中島京子氏は推薦文で、本作では死にゆく老母の胸中と、母を見送る息子の思いが交互に描かれると紹介しています。母は語らずに逝ってしまうため、息子が母を理解することはなく、なぜ母が彼の妹たちにつらくあたり続けたのかは、おそらく母自身にもわからない。戦争が彼女を決定的に壊してしまったということのほかには何も、と綴っています。また、フィンランドの「継続戦争」に関する知識はないものの、ここに書かれたことはあらゆる戦争で起こったこと、起こりうることだと感じたと述べ、兵士に限らず戦争という究極の暴力に晒された人々は壊れてしまうこと、そしてそのことに真摯に向き合いながらも、小説は静かな希望を読者に残してくれると評しています。

このほか、トゥルン・サノマット紙とカレヴァ紙の2紙、そしてフィンランド図書財団からも推薦の言葉が寄せられています。

  • トゥルン・サノマット紙:語らないこと、つまり沈黙を守ることが小説の中心的なテーマの一つであり、著者はそれを女性たちの戦争と結びつけ、銃後を守った彼女たちもまた戦争の犠牲者であったことを描いている
  • カレヴァ紙:言葉は精緻で、途切れがちながらも鮮烈かつ効果的に響く。一人の人間が抱えるトラウマを通してより大きな社会現象が浮かび上がり、精神的な苦悩によって崩壊していく家族の姿が、一点の曇りもなくリアルに描かれている
  • フィンランド図書財団:公式な戦争の語りからこぼれ落ちてしまった犠牲者、すなわち女性や子供たちに声を与える一冊である

著者と訳者のプロフィール

トンミ・キンヌネン氏は1973年、フィンランド北東部のクーサモ生まれです。トゥルク大学を卒業後、教師として十代の若者に国語と文学を教えるかたわら、舞台の脚本も手がけてきました。デビュー作『四人の交差点』はベストセラーランキングで13週連続第1位を記録し、ヌオリ・アレクシス賞、キートス・キルヤスタ賞など多数の賞を受賞しています。人物描写に長け、フィンランドで最も広く読まれている作家の一人で、作品は20以上の言語に翻訳されています。『樹皮の下で』は6作目の小説にあたります。

翻訳を担当したのは、フィンランド語文芸翻訳者の古市真由美(フルイチ・マユミ)氏です。トンミ・キンヌネン『四人の交差点』、イーダ・トゥルペイネン『極北の海獣』、ティモ・サンドベリ『処刑の丘』、アンニ・スヴァン『夏のサンタクロース』など多くの訳書があり、編訳書に『わたしがわたしから自由になる日』、共著に『はじめて読む!海外文学ブックガイド』などがあります。

書籍情報

  • タイトル:樹皮の下で(新潮クレスト・ブックス)
  • 著者:トンミ・キンヌネン
  • 訳:古市真由美
  • 発売日:2026年10月28日
  • 造本:四六判、クレストカバー
  • 定価:2255円(税込)
  • ISBN:9784105902131

出典:株式会社新潮社