山田雅穂『DEIB(デイブ)における経営倫理とCSRの役割』が「水谷雅一賞」と異文化経営学会賞を受賞

経営倫理とダイバーシティを問う一冊が、2つの学会賞に
文眞堂から2025年12月に刊行された、山田雅穂さんの著書『DEIB(デイブ)における経営倫理とCSRの役割―障害者雇用と女性、LGBT、がん患者の方々に焦点を当てて』が、2つの学会賞を受賞しました。ひとつは第6回(2026年度)「水谷雅一賞」(書籍の部・優秀賞)、もうひとつは2026年度 第14回 異文化経営学会賞(著書部門)です。
「水谷雅一賞」は、日本経営倫理学会を創設し初代会長を務めた水谷雅一氏の名前を冠した学会賞です。
「DEIB」とは何か、本書が投げかける問い
タイトルにある“DEIB(デイブ)”は、人の多様性を尊重して生かす「Diversity」と、公平性を高める「Equity」によって、すべてのメンバーを組織の一員として包摂する「Inclusion」、そして包摂されているという意識を育む「Belonging」を合わせた考え方です。日本の企業でも、D&IやDEIから、このDEIBへと発展させる動きが広がっています。
一方で、障害者の実雇用率は2.41%(法定雇用率2.7%)にとどまり、法定雇用率を達成している企業の割合は46.0%と、半数に届いていません。WHOによれば、世界人口の16%(6人に1人)、日本では人口の9.3%に障害があり、その数は高齢化やがん等によって増えています。
「誰もが障害や病気を持つ可能性がある」のに、なぜ障害者はダイバーシティの議論から取り残されているのか。どうすれば同じメンバーとしてDEIBやビジネス全体に包摂できるのか。そして、人生のどの段階で障害や病気を持っても絶望せず、安心して生きられる社会をどう作るのか。本書はこうした問いに、障害者雇用政策、経営倫理学、CSR、DEIB、障害者福祉という5つの分野から学際的に取り組んでいます。そこには、著者の独立社外取締役としての知見と、障害のある当事者としての視点も生かされています。なお、本書はJSPS科研費JP20K02219(基盤研究C)、JP24K05343(基盤研究C)の助成を受けています。
本書の特徴と選考委員会の評価
本書は、ダイバーシティを単に企業価値や利益を高めるための手段とは捉えていません。その土台として欠かせないものに、2つを挙げています。1つ目は、効率性原理・競争性原理に加え、人権を含めた「人間性原理」とサステナビリティを含めた「社会性原理」の4つをバランスよく発展させる「経営倫理」。2つ目は、慈善活動ではない「本業を通じて果たすCSR」です。
さらに、障害の特性に応じた工夫である「合理的配慮」によって障害が強みとなり「戦力」になること、そして「Equityとしての合理的配慮」を核心に据えることで、障害者雇用の方策が女性、LGBTやがん患者の方々にも有効であることを、具体的な実践方法とともに示しています。
障害者を含めた「真のDEIB」のあり方と実践方法を具体的に学べる、「基礎+専門書(応用)」のハイブリッド型テキストという位置づけです。企業をはじめとするさまざまな組織のDEI・DEIB担当者に加え、経営者、役員、DEIBの当事者まで、「すべての方々」が多様な場面や分野でDEIBを実現する力を身につけられる内容とされています。
日本経営倫理学会「水谷雅一賞」選考委員会は講評で、従来の多様性(Diversity)、公平性(Equity)、包摂(Inclusion)に「帰属意識(Belonging)」を加えたDEIBを取り上げ、組織の倫理的責任の核心をなす活動として、女性、LGBT、障碍者に加えてがん患者にも有効な施策であることを示した点に独自性が見られると評価。経営倫理やCSRに大きく貢献する研究だと述べています。
目次
- 序章 これからの日本での「障害者を含めた真のDEIB」の重要性
- 第1章 DEIBとは何か?─DEIBにおける障害者雇用の動向と実態
- 第2章 日本の障害者雇用政策と企業の取り組み
- 第3章 国連「障害者権利条約」と合理的配慮
- 第4章 経営倫理とは何か、CSR(企業の社会的責任)とは何か(第8節 株式会社アデランスのCSRとサステナビリティ)
- 第5章 「本業を通じて果たすCSR」としての障害者雇用とは
- 第6章 ダイバーシティにおける経営倫理の役割と障害者雇用
- 第7章 日本企業の障害者雇用施策とDEIB施策の共通性に関する考察─女性、LGBTおよびがん患者の施策との比較から
- 第8章 結論─CSRと「Equityとしての合理的配慮」による包括的なDEIB施策の構築
著者・山田雅穂さんについて
山田雅穂(やまだ みほ)さんは、中央大学経済研究所客員研究員、株式会社アデランス独立社外取締役、ダイバーシティ政策研究所所長、中央大学総合政策学部兼任講師。博士(人間福祉)。専門分野は障害者雇用政策、経営倫理、CSR、DEIB、障害者福祉です。
出典:株式会社文眞堂


